1960年代も引きつづき意匠替えを施したものが多く発売されました。贈答用として地色を5色に変えた「五色ピース」シリーズが特徴的な年代です。
もちろん周年記念やイベント記念も多く、一番の目玉はダイヤル回線や首都高、東海道新幹線の開通とオリンピックの開催が重なった1964年の記念品たちです。
60年代半ばからハイライトやロングピースに記念品の座を譲り、1966年にショートピースでの記念品の発売が終了しています。
1960年
1950年のジェーン台風で被害を受けた五重塔の塔の修復が1960年に完成した事を記念したパッケージ。
あおり構図で描かれた五重塔が素敵です。
第4回大阪国際見本市の記念。そろばんの珠が描かれたかなりシンプルなデザインです。
1858年に日米修好通商条約が締結されてから100周年を迎えたことを記念したイベント「日米百年祭」の開催に際して発売された記念パッケージ。
イラストの船はポーハタン号ですね。
1960年に大阪の国際見本市・港会場で開催された宇宙大博覧会。その記念パッケージです。
宇宙への憧れが最高潮だった時代が見えてきます。月の写真に衛星軌道が描かれているのが良いデザインです。
1889年に設立された列国議会同盟。現在は日本も参加していますが、言わずもがな1939年から52年までは資格停止に。
復帰後の1960年に第49回会議が日本主催の会議が東京で行われたことを記念したパッケージです。
国際会議の日本開催ということで日の丸をデカデカとデザインしたシンプルなものになっています。
電信が90周年、電話70周年を迎えたことを記念したパッケージ。受話器のデザインが良いです。電話はともかく、電信という言葉はもうあまり聞き慣れない単語となってしまいました。
1890年の帝国議会開設から数えて70周年を迎えた記念のパッケージ。手前に初代の国会議事堂「第一次仮議事堂」、奥に現在の「現議事堂」が描かれており、木造から鉄筋へと移り変わった70年の歳月が表現されています。
1961年
伏見稲荷大社の御鎮座1250年を記念して開催された大祭の記念パッケージ。千本鳥居の中にいるような真っ赤な地色に狐の面と内拝殿というデザインです。
法然の死後750年、親鸞の死後700年という浄土宗と浄土真宗の祖の大遠忌を記念したもの。
薄紫の背景に、親鸞ゆかりの佛光寺大師堂の屋根と飛び立つ白い鳩が描かれています。
東京国際見本市の第4回開催記念パッケージ。イラストはおそらく展示のブースを上から見た図を表したものでしょう。
第52回国際ロータリー年次大会が東京で開催された記念のパッケージ。 ところでどういう大会なんですかね?
10月1日の法の日を記念したパッケージ。いろんな「◯◯の日」があるものですね。
天秤が描かれていますが、これは司法関係でよくモチーフにされる「正義の女神」が天秤を手に持っている事に由来します。
1951年に納税貯蓄組合法が制定されてから10年を迎えた記念。貯蓄を表しているであろう、コインを持つ手の絵が印象的です。
兵庫県西宮市にあるえびす神社の総本社である西宮神社の本殿と拝殿が1961年11月に再建された事を記念したパッケージ。戦時中に空襲で燃えてしまったのを再建したそうです。
1964年東京大会開催まで3年となった1961年に発売された専売公社の協賛パッケージ。(1)とありますが、(2)はありません。
両面デザインなのが珍しいです。
1962年
1882年に開園した上野動物園の80周年記念パッケージ。独特な色使いのライオンやゾウなどの動物に、上野動物園の敷地内にある寛永寺五重塔、そしてモノレールが描かれています。
上野動物園のシンボルとも言えるモノレールですが、2017年から運休中です。
最近またパンダが産まれましたね。
第5回大阪国際見本市の開催記念。柱状節理みたいなデザインが気になりますが、恐らく立ち並ぶブースを表現したものだと思います。
鉄道開通90周年を控え、晴海の東京国際見本市会場で開催された「伸びゆく鉄道科学大博覧会」を記念したパッケージ。
車輪を「90」にした抽象的な蒸気機関車のデザインが印象的ですが、これはポスターのイラストをアレンジしたもの。つまりは博覧会のロゴです。
当時会場近くまで敷設されていた港湾局の専用線を使って実車を持ち込むというかなり大掛かりな博覧会で、今でも馴染み深い弁慶号やC62形1号機、EF55形などの引退済みの車両が展示されたほか、
屋内会場では新幹線1000形A編成の先頭部モックアップが展示されるなど、それはそれはものすごい内容だったみたいです。
東京の晴海埠頭で行われた港湾博覧会開催記念のパッケージ。デフォルメされた船舶と博覧会のロゴマークが描かれています。
アルコール専売事業が25周年を迎えたことを記念したパッケージ。フラスコの中に機械を入れたデザインがおしゃれですね。
1872年に日本で初めての鉄道が開通してから90周年を迎えたことを記念したパッケージ。日本初の機関車「1号機関車」と当時の最新電車「新幹線1000形B編成」が描かれています。
1000形の全周幌や二連パンタグラフなどの特徴がきっちり再現されているのが面白いです。
日本印刷産業連合会が4年に1度開催している「印刷文化典」と、第2回アジア印刷人大会なる謎の大会の記念。
印刷業界の人が集まる技術交換などのイベントなのでしょうか。
農業協同組合が1962年から毎年秋に開催している「農業祭」の第1回開催を記念したパッケージ。
白地に高さの違う麦の穂というシンプルな絵柄ですが、カラフルにデザインしているのが素敵です。
1962年に発売された意匠替えデザイン「五色ピース」です。通常デザインの地色を青・黄・赤・紫・緑に変えたカラフルなもの。紫が高級感あって好きです。
1963年
1963年3月16日から5月31日まで二子玉川園で行われた航空博覧会の記念パッケージ。
青空を思わせる青い背景に、クラシックな複葉機と当時最新のジェット機が描かれています。新旧対比というデザインのコンセプトは「鉄道開通90周年記念」と同じですね。
1956年10月11日に発生した火災により焼失した大講堂を再建した記念のパッケージ。再建と言っても、山麓の坂本にあった讃仏堂を移築し、大講堂と改称したものになります。
比叡山の両側、大津市と京都市で発売されました。
東京国際見本市の第5回開催記念パッケージ。前回の第4回が1961年だったので、1962年の開催は無かったようですね。
表側のイラストは見本市会場から伸びゆく技術や製品を表したものでしょうか。
1863年に赤十字社が設立されてから100周年を迎えたことを記念したパッケージ。船の上に乗った赤十字と地球の地図で国際組織である事を表しているみたいです。
終戦から18年が経ち、戦時中に生まれた世代がたばこを吸うようになった頃に発売された追悼箱。まぁこの頃なら20歳になる前から喫煙してる人なんかごまんといそうなものですが(小声)
国土建設大博覧会開催を記念したパッケージ。こういった業界内での博覧会はあまり資料が残らないのですが、建設機械やプレハブなどを展示していた博覧会だったようです。
日本専売公社の前身、大蔵省専売局が1904年にたばこの製造・専売を開始してから60年を迎えた記念のパッケージ。
安易に数字で「60」を描かずに、たばこから立ちのぼる煙を渦巻き状にしたデザインがモダンです。
大阪市天王寺区にある言わずと知れた四天王寺。1945年の空襲で寺の大部分が焼失してしまい、1940年に再建された五重塔まで失われてしまいました。
1957年から再建を開始し、1963年に五重塔含め他の焼失した建物の再建が完成。それを記念したパッケージです。
1948年の自治体消防制度発足から15周年を迎えた記念。赤地に消防ホースと火の組み合わせで火災への注意を促しているようです。
喫煙率が高かったということはボヤ程度の火災もかなりの件数があったものと思われます。某ホテルの大火災もたばこが原因です。
五色ピース ばら・カーネーション・ばら・ゆり・ばら
1963年に発売された「五色ピース」では花の写真が採用されました。色は青・黄・黒・紫・緑で、花はそれぞれ「ばら」「カーネーション」「ばら」「ゆり」「ばら」です。
1964年
1962年に東京〜名古屋間で長距離ダイヤル回線が開通したあと、1964年3月に京阪神地域まで延伸されたのを記念したパッケージ。
黒電話から各都市に回線が繋がっている表のイラストと市外局番をダイヤルの穴に配置した意匠の裏面のイラスト、どちらもイカしてます。
1964年の4月から6月にかけて、パリのルーブル美術館に収蔵されているミロのヴィーナスが来日を果たし国立西洋美術館と京都市美術館で特別公開されたことを記念したパッケージ。
ミロのヴィーナスが国外に持ち出されたのはこのときっきりで、輸送中に破損が生じて慌てて修復したという知る人ぞ知る逸話があります。
1964年開催の第6回大阪国際見本市開催記念のパッケージ。バラが入った浮いたキューブの絵柄がちょっとハイカラ。
1934年から1964年まで続いた姫路城の修理工事、通称「昭和の大修理」が完成したことを記念したもの。
平成に入った後の2009年から2015年にかけても修理が行われたのが記憶に新しいですね。
1064年6月に新潟県で開催された第19回国民体育大会を記念したもの。同年にオリンピックが開催されることもあり、秋季大会を春に移して開催したそうです。
1859年旧暦5月28日に米英仏露蘭の5ヶ国と友好通商条約が締結された事を記念した日、6月28日の「貿易記念日」の記念パッケージ。1963年制定の記念日なので、制定1周年記念といったところでしょうか。
小さいキャンバスで簡単に貿易を表すイラストを描く才能、結構凄いと思います。
1964年8月2日に首都高速1号線・4号線の一部区間が開通する事を記念し、前日8月1日に発売された記念パッケージ。
ピースの記念パッケージはイラストがメインですが、こちらでは写真が使われており異質です。写真は江戸橋ジャンクションを人形町側から撮ったもの。
琵琶湖に架かる琵琶湖大橋が1964年9月28日に開通するのを記念し、9月23日に発売された記念ピース。
メインとなる琵琶湖大橋を背景にして、満月寺浮御堂を手前に配置するデザインセンスはなかなかのものです。
1964年10月1日に東海道新幹線が開通することを記念して発売されたパッケージ。青っ鼻の0系が印象的です。
東海道新幹線の試乗会日、9月30日に発売されています。発売場所は沿線主要都市となっていますが、おそらく試乗会の際にホームでも販売されていたと考えられます。
フラットデザインなのでスカートの凹凸やフィンは白や水色で表現して立体感を出しているあたりにデザイナーのセンスが光ります。
まだShinkansenの表記が普及する前なので、NEW TOKAIDO LINE(新東海道線)と書かれています。
専売公社の塩専売60周年を記念したもの。結晶のデザインがかっこいい箱です。
1949年に施行された青色申告制度の15周年記念パッケージ。万年筆とそろばんと青色申告制度の記念なので青い地色。シンプルですが、濃い青で影を表現しているのが良いアクセントです。
東京オリンピックに続いて開催された東京パラリンピック1964年大会の開催記念パッケージ。五色ピースの赤よりも赤みが強い地色が眩しいですね。
パラリンピックのロゴが特徴的です。
11月7日から13日までの1週間を「優秀国産品認識週間」とし、経済成長著しい日本の国産品の良さを再認識させる狙いがあったみたいです。
別にイベントがあったわけではなく、ただそういう週間。それを記念したパッケージです。
誰一人として意識してない気がしますが、この週間自体は現在も「国産品認識週間」として健在です。
皆さんもこの時くらいは身の回りの国産品を見直してみてください。
1965年
兵庫県 第20回国民体育大会冬季大会スキー競技会記念
第20回国民体育大会の冬季大会でスキー競技が行われた記念のパッケージ。デザインは前年の東京オリンピック記念パッケージの意匠を踏襲しています。
東京〜京阪神間の開通から遅れること約1年、東京と全国の県庁所在地とのダイヤル通話回線が開通したことを記念したもの。
電話のダイヤルと双方向通信を表していると思われる矢印がデザインされています。
1895年3月15日創建の平安神宮が70周年を迎えた記念のパッケージ。白と青のさわやかなデザインです。
816年に金剛峯寺が創建されてから1150年を迎えることを記念したパッケージ。描かれているのは壇上伽藍だと思います。
深緑の地色に金色の雲がかかっているのが日本らしくて良いデザインです。
1885年に「専売特許条例(現 特許法)」が施行されてから80周年を迎えたことを記念したパッケージ。
英語で特許を意味する Patent の略「PAT」と「80」を重ねたシンプルなデザインです。グレーの地色に少し小ぶりなピースのロゴで落ち着いた雰囲気が出ています。
普通選挙40周年・婦人参政20周年を記念したパッケージ。それをどう表現したらいいのかピンと来なかった様子がひしひしと感じられる、日本列島とバラと40・20の数字のデザイン。
1965年6月15日から20日まで阪急百貨店で開催された海外経済協力展の記念品。
現在は「海の日」として定着している祝日の7月18日ですが、1996年に祝日化される前は「海の記念日」と称されていました。
その海の記念日が1941年に制定されてから25回目を迎えた記念のパッケージです。デフォルメされた船に、貝殻や巻貝、ヒトデ、旗が描かれています。
1965年に開催された福島博覧会を記念したパッケージ。
1950年8月29日に施行された文化財保護法が15周年を迎えた記念のもの。2体の「踊るはにわ」がなんとも言えない雰囲気を出しています。
この法のおかげで今日に至るまで古い文化財が残されているわけです。
グレゴール・ヨハン・メンデルが1865年に「メンデルの法則」を発見してから100周年を迎えた記念のパッケージ。
メンデルはエンドウマメで遺伝の研究を行っていたことから、エンドウマメのイラストとメンデルの肖像が合わさったデザインになっています。
現在も活動を続けている青年海外協力隊の第一回海外派遣が行われた記念のパッケージ。
日本から各国へ旅立つ様子を、日の丸の四隅から矢印が伸ばされる図で表現されています。
1966年
1966年1月26日〜2月18日に行われた教祖80年記念祭の記念パッケージ。表裏でピースのロゴと天理教の紋の配色が反転しているのが特徴です。
記念ショートピースとしては最後のものとなる、簡易保険の創業50周年を記念したパッケージ。現在の「かんぽ生命保険」の前身です。
住宅とロゴがデザインされています。
1964年・65年は五色ピースの発売はありませんでしたが、1966年に慶寿祝いとしてめでたいデザインを施した五色ピースが2年ぶり発売されました。
色もカラフルやお洒落な印象が強い1962年版や1963年版とは異なり、比較的落ち着いた色調で色調で揃えられています。絵柄はそれぞれ「松・竹・梅・鶴・亀」です。
「記念・観光たばこデザイン 第1集」の図録では「慶」、同書の巻末の総目録には「五慶寿」と記載されていますが、ここでは「五色ピース 慶寿」と称することにしました。