ある日の昼、プラレール資料館に一通のメールが届く。件名も本文もなく、画像のみが添付されたメール。よく貴重な品の資料を送ってきてくれているコレクターの方からだった。
「この方が送ってくるという事は、まだ未収蔵な上にかなり珍しい品に違いない。今回はなんだろうな」
メールを開き、画像を見た私は驚愕した。おそらく、知られているプラレールの中では最も珍しく、入手難易度の高いものが写っていたからだ。
▲真っ白な箱。
ブランドとしての歴史は非常に長いものの、同じタカラトミーのトミカとは違い、大系的な資料に乏しいプラレール。
以前発売された「プラレール大図鑑」や、50周年記念で発売された「ぼくらのプラレール 50th Anniversary」の上下巻のような、どちらかと言えば子供向けの本を除けば、歴史についてまとめて製品の考察をしたような書籍は1998年発売の「プラレールのすべて」が最後となる。これ以降の製品については、あまりまとまっていないというのが現状である。
非売品が特に難しい。「プラレールのすべて」刊行に前後して登場した非売品のプラレールは配布条件が様々で、未だにどうして存在するのかすら分からないものも多く、資料保存の重要性を改めて認識させる代物が多い。
今回ご紹介するものは、そんな詳しい資料が調べられる限りでは見つからない製品のひとつだ。
▲内容物は至ってシンプル。車両、そして当選通知と部品注文書のみ。
C62 1号機・2号機 クリアバージョン
このプラレールの正式な商品名である。
2003年4月17日に発売された「サウンドC62重連セット」のC62形1号機・2号機をクリア成型にしたもの。ただそれだけであるが、他のクリア車両と比べると非常に人気が高い。
その希少性から来る人気であろうが、本当にほとんど出回る事がない。
2003年の秋頃に「エヴリデンチ TOMYのおもちゃプレゼント」の応募懸賞品として配布されたことが当選通知書から分かるが、応募期間、当選者数、発送時期などは全くの不明だ。
肝心の「エヴリデンチ TOMYのおもちゃプレゼント」の情報がwebアーカイブにすら記録されていないのである。
また事実確認は出来ていないが「株主優待品として配られた」「公式ホームページの『ファンの広場』掲載のお礼として送られてきた」という証言もある。
しかし最近になって「10個、いやそれ以下しか配布してないかもしれない」と有力筋からの情報も得ており、結局謎のベールに包まれたままという事には変わらないようだ。
ともかく、上記プレゼントキャンペーンの当選品として作られたのは事実である。
▲テンダー機関車が二段で入っている内箱はこの製品が唯一のもの。
▲箱の裏。商品名が書いていないのが不思議だ。
車体はほとんど無色透明。前面の煙室ハンドルが塗られている以外は綺麗なクリア成型だ。2号機のデフレクターにつばめマークがきちんと印刷されているのがアクセント。足回りは通常のC62と同じく黒いものを使っており、白いスケルトン車体から覗く内部機構がかなり目立つ。
車体側に表現されている第2動輪までもがクリアのままとなっているところに拘りを感じる。
クリア車体となっても、C62特有の堂々とした重量感は変わらない。これがもう20年近く前のものだと言うのだから、時の流れは恐ろしい。
金色の煙室ハンドルが表情を引き締める。この色指しがあるかないかで見た目を左右するので、企画した人は相当なマニアかもしれない。
テンダー後部を見ると車体内側の刻印や射出時に生じる凹凸が目立つ。これもスケルトンボディの醍醐味である。
「クリアはやて」の収蔵を2022年最大の出来事としてから2週間も経たぬうちに、再びこのような第一級品を収蔵するに至った。
もう師走。来年はどんな出来事が待っているのだろう。こんな時にはこんな言葉が似合うかもしれない。
「プラレール、恐るべし」
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第6回公開に合わせて、先日のクリアはやてに続いて
非売品のページにクリアC62も収蔵しました。
もう一つ、気になっている非売品で「金ピカライト付ひかり号(仮称)」があります。以前リニア・鉄道館のプラレールイベントのポスターにシレッと現れた謎の車両です。
JR東海のためだけに1本制作されたという説が有力ですが、いつか目の前に現れる事を期待しています。
今回の記事作成にあたり、お写真を提供してくださったF氏に心より感謝致します。ありがとうございました。
令和4年12月吉日
その後...
2022年も終わろうとしていた頃、プラレールファンの会合にてとうとう
クリアはやてとクリアC62が邂逅。おまけにイーストアイのクリア中間車カバーも並べてみました。
こちらのC62は当館のものとは別個体(!)ですが、両者の収蔵から現物の並びの実現まで超スピードでした。
令和5年1月31日
「その後...」追記