極秘指令D51C号

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◀︎第8回第10回
公開:2023年10月16日
最終更新:2023年10月16日


資料館本部。YP(よびりん・ぴんぽん)警報が鳴り響き、いつもに増して慌ただしい雰囲気だ。
メンテナンスステーションの赤色灯が点滅している。


「館長は?」「いま向かっているそうです。あと数分ほどで到着の見込み」

数分後、電話で何か話しながら館長が現れた。誰かと話している。
「ああ。分かっている」そう言うと館長は電話を切った。
「警報を止めろ」「警報を止めます」「誤報だ。探知機のミスだ。梅田と立川にはそう伝えておけ」

よびりん・ぴんぽん号が引っ込み、メンテナンスステーションの洗車場にあるスイッチが切られる。

「今回ばかりはマズいぞ。まさか現存しているとはな...」副館長が耳打ちする。
「極秘指令D51C号を発令。現時刻を以て本館職員の一切の外出、及び外部との連絡を禁止する。全館、第一種警戒態勢」

「総員、第一種警戒態勢。繰り返す。総員、第一種警戒態勢。A級所員は可及的速やかに第一会議室にお集まりください」

全館アナウンスが流れる中、第一会議室にメンバーが集う。
「目標物は依然健在。既に落札額予測不能との分析結果が出ています」監視を続ける所員が言う。
「電話しましょうか?」と副館長。外星人が現れそうだ。

「分析パターン、クリア。間違いありません」

作戦会議室のモニターに映し出されていたのは・・・。


しばらくしてから、ザラブ氏とメフィラス氏が揃って呼び出された。

第1日目
決戦当日までの間は入手に至るまでを検討する会議が続く。
「詳細な分析結果が出ました。配布数はおそらく4個と見られ、フォトコンテストの大賞で1個、プラレール賞で3個が出回ったものと思われます」
「他の個体は見つかっていないのか?」
「現在、スーパーコンピューターMARIに2002年から現在までのデータを調べさせています。結果が分かり次第共有します」

第2日目

メフィラス「館長、今日秋葉原に行かないか?」
館長「行かない」

第3日目
コンピューターの解析が完了した。

「観測可能範囲内に限りますが、過去に出回った事例は確認できませんでした。恐らく今回が初だと思われます」
予想通りとは言え、解析結果に会議室の面々がざわつく。
「やはり今回が初というのが濃厚か」「一体どんな結果で終わるというのだ」「だいたいタルタルソースは別皿で用意した方が喜ぶ人もいると思うんですよね」「クリアはやての件から1年も経っていないというのに...」「300km/hくらい出る」

いよいよ明日だ。

第4日目

ザラブ「50万まで出す」
メフィラス「望むところだ」

館長「マジかよ」

4日に渡る会議の末、両氏思い入れのあるプラレールということで、今回はメフィラス氏とザラブ氏が一歩も譲らない直接対決を行うこととなった。それを見守ることとなった館長。
決戦当日。両者がフィールドに立つ。
思いのほか低い入札額で留まっていたが、両者が参戦した瞬間から果てしないバトルが始まった。高値更新、入札、高値更新、入札...
気が付けば2ケタ台に突入。それでもバトルは終わらない。

終わりが近づき、館内にカウントダウンのアナウンスが流れる。

「15、14、13、12...」
しばらく見守っていたメフィラス氏が口を開く。「いや、応札だ!俺が獲る!」
「ダメです!メフィラスさん!もう時間がありません!終了時刻です!」「残り1秒あれば十分だ」「1秒って...」
「5、4、3、2」
キーボードの音が鳴り響いた直後、リターンキーが押される。
「カウントリセット。300秒より再開します」

ザラブ氏、デカい声を出す。

残り30秒。

20秒。

10秒。

終了。

「参りました」メフィラス氏が頭を下げ、ザラブ氏と固い握手を交わした。

近年稀に見る戦いは、無事に幕を下ろしたのであった。

それではお見せしよう。これが「タイムステーションD51 クリアタイプ」の姿だっ!!!


経年劣化もあり、完全にとまでは行かないが、それでも無色透明な大きなボディを持つ。車内にあるダイヤルを始めとし、通常品にはある装飾が一切無いが、付属のステッカーを自分で貼っていくタイプだったのか、そもそも無装飾状態が正なのかは残念ながら不明だ。


強度の問題だろうか、背面の蓋は通常品と同一のものが装備されている。


展開した様子。


クリア成型だと少し分かりづらいが、写真中央にあるのがダイヤルだ。通常品のタイムステーションでは「東京行き」などと書かれたステッカーが貼られているが、ステッカーが貼られていないクリアタイプでは何も出ないただのギミックとして存在している。
本来なら隠れるものがクリア成型により丸見えになってしまう事を考えると、無装飾の方がいいのかもしれない。


キャブ部分のアップ。ボイラー上部とは異なる樹脂が使われているようで、変色の具合が異なる。こう見るとかなりメカメカしい。


底面。ネジやバネ、手転がし用の車輪を留めるシャフトなどが全て丸見えだ。


側面を閉じた状態で内部を見ると、さながら銀河鉄道999号のボイラー室のようだ。


キャブ下部周辺の細部。


車両を入れた様子。そもそもが近未来イメージのタイムステーションD51だが、クリア成型になって車両が入ると更に近未来施設感が増してくる。


配布から20年以上が経過し、当選者数の数も数なので現存が危ぶまれていたタイムステーションD51 クリアタイプ
まさか現存しているものがあるだなんて、プラレールの世界の奥深さを改めて認識する機会となった。いずれ、クリアレールとクリア車両を使ったオールクリアレイアウトを組んでみたいものだ。
残す幻のプラレールは何になるだろうか。あるところで10個が配布されたと伝わる「小田急3000形」あたりだろうか。出てくる事を期待したいものだ。

今回の記事作成、および収蔵するにあたり再び協力して頂いたザラブ氏、メフィラス氏、F氏、T氏、資料館関係者各位に感謝致します。ありがとうございました。

令和5年10月吉日

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