プラスチック汽車シリーズは1965〜66年頃にブランド名「プラレール」に改称され、徐々に子供向け知育玩具として定着していきました。
1970年から実在の車種をモデルとした商品の開発・発売を始め、同時に今までは入門系のレイアウトが多めだったセット品も急速にその内容が発展しました。
この頃の製品を通称「メリーゴーランドマーク時代」と呼び、ブランドイメージの試行錯誤が見られるパッケージでのリリースが行われました。
「トミー ◯◯プラレールセット」と命名されているのが特徴的ですが、カタログでは単に「◯◯セット」と表記されています。
同年発売の新製品「でんききかんしゃ」のセット。赤いEF15が貨車を牽引するベーシックなセットです。
この個体は箱にSTマークが印刷されており、EF15が黒シャーシである後期品で、1973年上半期頃に製造されたものです。
パッケージの写真をよく見ると、「こうかレール」の上に直線レールを重ねて高架線を作っています。それ自体がレールなんですけども...
1973年末までに旧動力時代初期②の箱に更新されていますが、1974年の新セット同時発売を前に絶版となった模様です。
「ニューでんしゃ」唯一のセット品。基本的な小判型レイアウトですが、ワンポイントとして「はねばし」が入っています。この「はねばし」は単品発売からこそ引退しましたが、レールセットでは2023年現在も現役のロングセラー品です。
複線レイアウトがテーマのセット。「ふくせんプラレール」から駅を外して車両を変えただけですね。「とっきゅう」の中間車が電動超特急ひかり号・D-51きゅうこうれっしゃと共通なのは有名ですが、この頃はまだひかり号用の帯モールドが無い金型が使われており、地味に珍しいものです。
70年代セットの傑作とも言える大掛かりな情景を持つ全自動ふみきりセット。プラハイウェイとコラボした初のセットです。
この世代の他のセットと比べると斬新な箱写真をしており、踏切に差し掛かるD51を写しているのがお洒落です。
早期に消えた情景部品「桜の木」と「ハウスブロック」が写っているのも泣かせます。直線レール2本分の長さを持つ「全自動ふみきり」が堂々と真ん中に鎮座しています。
車両が踏切に差し掛かり小屋のレバーを押すと、踏切小屋内のモーターが作動して遮断機を下ろし、車(ブルーバード)が停止、車両が通過すると遮断機が上がり車が発進という動作をします。しかも両方向から進入しても動作する優れもの!
後年のどの踏切にも見られないモーターギミックを搭載しているのが非常に珍しく、現存していた事自体が奇跡と言えます。
当館で収蔵しているものは標識が欠品しており、プラハイウェイのカーブ用に金属製のガードレールが入っています。このガードレールは他の個体には見られないので、正規品なのかどうかは不明です。
また、箱の写真のD51はいわゆる青D51ですが、こちらは黒いD51が入っています。青が入った個体も出回っていたのでしょうか?
日本の鉄道開業100周年を迎えた1972年に発売された弁慶号。やはり目玉商品になりますので、セット品も発売されました。
Uターンレールで複線を挟んだ変則エンドレスが特徴のセットです。単品には無かった旧型客車が付いているのが高ポイントです。
「いなかの駅」はセットオリジナルのカラーリング。弁慶号が走っていた北海道の駅のイメージが湧いてきますね。
上部両側の黄色いモノは「補助ブロック」といい、他の車両と比べて少し車高の高い弁慶号を高架下に潜らせるために、橋脚にはめて使うための部品です。
補助ブロックが残っている個体は珍しく、このセット自体も1年足らずの生産になるので非常に珍しいものとなっています。
上の弁慶号のセットと同じく、これまた変わったレイアウトのセット。商品名の通り、転車台がメイン情景となっています。写真の配置が弁慶号のセットと全く同じですが、パノラマレイアウト写真が共通であることから、同時発売されてことが伺えます。
テンダー車がすっぽり収まる大型の転車台を中心に、Y型レールとUターンレールを繋げたラケット型のループ線が両端に接続するというレイアウトです。C58の単品には客車が付属しますが、このセットでは方向転換遊びをするために機関車のみが入っています。上の弁慶号のセットと逆になりますね。
転車台とY型レールは共に凹ジョイントなため、ジョイントパーツ(マメ)が付属しています。「ほどうきょう」が付属するのは機関庫を跨ぐ跨線橋をイメージしてのことでしょうか?
余談ですが、古いプラレールファンの中にはこの転車台をお好み焼きと呼ぶ方がいます。言われてみれば、なんとなくそう見えてきます。
D51きゅうこうがメインのセット。1970年に発売された「D51きしゃセット」(2024年6月現在未収蔵)の模様替え品で、車両を「D51きしゃ」から「D51きゅうこうれっしゃ」に、「えき」を「いなかのえき」に変更したもので、合わせて収納容器も改修されています。
Y型レールが「でんどうプラレールでんしゃセットNO.2(1968年)」のものと異なり、後に出ている溝付きの後期品とも違うため、短期間だけ生産された改良品のようです。
後年、同名のセットがいくつか発売されていますが、どれもレイアウトが異なる別物です。
地味な存在かつ簡素なレイアウトのセットですが、実はかなりの大珍品。1970年代前半の製品としては有名な「ちんちんでんしゃ」が主題のセットです。
都電8000形がモデルの「ちんちんでんしゃ」ですが、今も昔もプラレールには路面電車用の併用軌道なんてもの存在しないため、車両に合わせた情景を入れようにもなかなか難しかったのでしょう、入っているのが「ほどうきょう」と「なみき」だけという苦肉の策が垣間見えるセット内容となっています。車両は運転台窓が開口している初期品です。
箱写真はなかなか秀逸なもので、高架線の内側を回ってから複線で外に出るという、まさしく都電を表現した素敵なものになっています。高架線上に青いプラ電車がいるのが注目ポイント。
ふくせんプラレール特急電車高架つきセット(1972年)
「ふくせんプラレール」を冠するセットとしては一番最後のもの。
内容的には「ふくせんとっきゅうセット」の高架版ですが、レール構成がそのままなため高架上にポイントレールがあるという近年でも目にしないレイアウトになっている事に注目です。
上に掲載している「ふくせんとっきゅうセット」の翌年に発売されたものですが、こちらでは中間車がひかり号のモールドが追加されているものが入っています。
鉄道開通百年記念ステッカーが残っている個体も見つかったので、こちらも掲載します。
DD51の最も初期の形態であるグレー台車にグレー屋根のものが入ったセット。積み込み貨物駅と積荷おろし貨物駅が入っています。箱写真はの貨車は赤色ですが、これは試作品のようで、セットには黄色いものが入っています。
所有者様は子供の頃に買ってもらったものをそのまま保管していたそうで、箱を補修して大事にしていた事が伺えますね。
未掲載品
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ふくせんプラレールステーションニューセット(1970年)
D51きしゃセット(1970年)